寄留者であるアジア人のひとりとして

親愛なる竜さん

与論の夏はまだ続いていますか?

僕はこの夏の間、アムステルダム・バルセロナ・ルーマニア・ロンドンと仕事で飛び回っていましたが、ある都市ではとっくに夏が終わっている一方、イタリアに戻ると史上例を見ないほどの熱波と、体を気温の変化に合わせるが大変でした。

そんなミラノもいよいよ秋の気配を感じるようになって、少しさみしくなったりもしています。夏が過ぎ去っていく感じは、何故か感傷的になりますね。

ミラノから欧州の各地に飛行機で飛ぶ時には、いつもiPadで映画を観ています。

その時間は自分にとってとても大切なものなので、iTunesの映画レンタルストアから慎重に作品を選びます。この夏の最大のヒットは、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作とした韓国映画『バーニング』でした。

この作品は(今話題の?)NHKがカンヌ国際映画祭など、欧州で評価の高いイ・チャンドン監督に映像化を持ちかけて完成した作品だそうです。村上春樹作品がもつ繊細で深淵な世界観を保ちつつ大胆にアレンジ、舞台を現代韓国に移し、韓国の青年たちが抱える課題を鋭く描きつつ、謎が幾重にも広がるミステリー・ドラマとして仕上がっていて、韓国と日本の素晴らしいコラボレーションだと思いました。

ところで、僕はミラノでは2003年以来16年間、韓国の人々と一緒に礼拝を捧げています。韓国人と日本人の共通語はイタリア語、礼拝は、日・韓・伊のトライリンガルです。先日、両国で(戦後最悪)と呼ばれる日韓関係の中で、64歳になる韓国人牧師が講壇に立ち力強くメッセージを取り次いでくれたのですが、その中で言われた言葉に感動しました。

「どの国の政治家も、考えることは敵を作り、自分たちの政治生命を延長させようとするものだ。」

「私たちの教会は、政治と切り離された存在で、政治的な憎悪の影響は受けない。」

「日本は1993年に河野談話を発表し、私たちは受け止めた。そして赦し、今は愛し合っている。」

韓国人は誰でも「河野談話」が意味することを知っています。むしろ、日本の人の方がそのことを知らなかったりするので、驚かれたりもします。

いずれにしろ、それぞれの政治的なポリシーや歴史感があったとしても、私たちはイタリアでは同じアジア人の寄留者、これまでも共に助け合い、食卓も何度も共にし、信頼関係を築いてきました。欧州で、アジア人のひとりとして生きるうえで、何よりも大切なことだと感じています。

だから、これからも共に愛し合っていこうと思っています。

寄留者であるアジア人のひとりとして

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